2017年のBLACK DIVISION1回戦の東2局のシーン。
東2局では親の達也プロと多井プロの手牌がぶつかります。
解説の白鳥プロも「うますぎでしょ!」と舌を巻いた1局です。
では配牌からどうぞ。
配牌と点棒状況。
親の達也プロ。が対子でまとまった配牌です。
南家の平賀プロはが対子のが暗刻ですね。
佐々木プロは萬子が多め。
そして多井プロの手牌。
3巡目~15巡目。
3巡目の多井プロ。を重ねてを切っています。
生牌の役牌が3枚浮いていて、対子が多め。
受けに回りつつ、七対子が本線でしょうか。
そして5巡目の達也プロ。
ドラのにがくっつきます。
このリャンシャンテンの形からの打牌選択。
ドラを使い切ると仮定すると「678」の三色を見てのの1枚外しか、辺りが候補でしょうか。
達也プロが選んだのは切り。
これだとが雀頭にを鳴いてタンヤオに行こうとしてもやのチーはできない手恰好になります。
一見すると鳴いて動けるを残した方が軽いアガリが拾えそうですが、面前で手を進めることを前提にすると実は切りがいちばんロスは少ない選択なんですよね。
面前で高打点を狙う達也プロらしい選択かもしれません。
上手くいけばタンヤオ、ピンフ、ドラ1。理想は「678」の三色。たとえタンピン三色が崩れても最低でもリーチ、ドラ1、で十分という考えでしょうね。
さて、この選択がどう出るのか。
6巡目にはを暗刻にしてを切り。
さらに7巡目にはタンヤオが確定する絶好のツモ。
切りが正しかったことを証明してくれました。
2枚目のを切って先制リーチが掛かります。
待ちはドラ表示牌のカンです。残りは2枚。
直後の多井プロはこの形。が重なって、一応は七対子のイーシャンテン。
しかし親のリーチに生牌のもドラのも切りにくいですね。暗刻のもも厳しいか。
そもそもこの手でどこまで押す価値があるのか。
多井プロの選択は、
ここは一旦1枚切れのを外して迂回します。
さすがに真っすぐは行ける手ではないですね。
そして8巡目にはを重ねて、
の対子落とし。
9巡目には対子のが暗刻になります。
牌が縦に縦に寄ってきます。気付いたら四暗刻のイーシャンテン。
難しい打牌選択ですが、ここでは強気に生牌のダブを切っていきます。
ここまで手が育つとを切る価値がありますよね。
ツモスーのテンパイが入ればドラ切りも辞さないでしょう。
そして10巡目にはドラのにがくっつきます。
また難しい選択です。
ドラのとドラ跨ぎのの両方は切りにくいですね。リーチに萬子は何も通っていません。はリーチの達也プロの中筋。
さて、どうするか。30秒ほどの長考の結果、
多井プロはドラの周辺は残してを切ります。
ここで四暗刻は見切りですね。
の暗刻で攻撃力は十分あるし、親のリーチにドラ周りの無筋を2枚は切れないという判断でしょう。
そして11巡目。
多井プロがペンを引き入れてテンパイです。
なんと達也プロの当たり牌を自らの手牌に吸収しています。
完璧すぎる手順です。
これではヤマに残り1枚。
ツモり三暗刻の形でリーチです。ツモれば3000.6000。
多井プロの待ちはヤマにが0枚。が2枚。
そして決着は15巡目。
達也プロがを掴んでしまいます。
見事なの対子落としでドラが使える形のタンヤオのテンパイにまとめたのに、痛い放縦となります。
リーチ、役牌、ドラ1。6400点。
解説。
では白鳥プロの解説です。
「(達也プロの切りを見て)これは達也さんらしいですね。まだタンヤオが確定しているわけではないんですよね。とのターツがあって、タンヤオがかなり崩れそうなのでは残してを打っておいて、のポンの保険もかけたいところなんですよ。を残しておくと「678」の三色の可能性もありますからね。を残してを1枚外しても三色の可能性は残るんですけど、を捨て牌に2枚並べる方が相手に与えるプレッシャーは強いですし、を2枚残しておいたほうが安定した形で手を進められるのでロスにはなりにくいんですよ。手役重視の達也さんらしい1打でしたね」
「(序盤の多井プロの手牌を見て)この局は自分の手牌も良くなくて、生牌の役牌が3枚あるので受けつつ七対子とかになったら攻めようかなといった手牌ですね」
「(多井プロがをツモって小考しているシーンで)達也さんのリーチが(まだ残っている)の対子落としをしているから、待ちは分からないけど打点があるのは間違いないんですよ。ここでドラのとドラ跨ぎのが切れるかどうかですよね。(その直後に多井プロがペンを引き入れてテンパイしたのを見て)うわぁ・・・上手いですね・・・。麻雀上手いですね(笑)。これって(達也プロの当たり牌の)を吸収したってことですよね。(その後の達也プロのでの放縦を見て)いやー、こんだけ上手く打っても放縦に回ってしまうんですね・・・。しかし(多井プロは)すごいわ・・・。ただ者じゃないですね・・・」
「こんなの見せられてテンション上がってきました。ちょっと熱くなってきました。上着脱いでいいですか。ホントすごい」
と興奮気味の白鳥プロでした。
ではまずは達也プロの手順についてです。
ポイントは5巡目の切りの選択ですね。何回見返しても正解が分からないような手恰好です。お茶を濁す形でやに手をかける方も多いのではないでしょうか。「何切る」にでも出てきそうな難しい局面ですね。結果論からいうと達也プロの手順が最速のテンパイです。
ここはもうドラ表示牌のカンと心中することを選んだわけですよね。
ヤマには2枚あったわけですから間違った選択ではないですし、これはもう仕方ないですね。こんな不確定な要素も麻雀の楽しさのひとつです。
そして多井プロ。決して配牌は良くなかったんですがツモが縦に伸びましたね。
おそらくこういうときは常に遠くの2翻役を意識してるんでしょう。この場合ですと七対子や三暗刻ですね。
現実的なところは七対子かなと思ったら、あっと言う間に三暗刻や四暗刻まで見える形になりました。
しかしすごいですね。とをそれぞれ対子で落としてるのに、最終形はツモり三暗刻のテンパイですからね。相当縦寄りのツモだったとはいえ(リーチ後の対応ですが)2種類の対子落としをして、待ちがシャンポン待ちってかなり珍しいですよね。
そして11巡目のペン引き。これはとを手の中に残したからが有効牌として使えたわけで、四暗刻を真っすぐ目指してる打ち手なら迷わず萬子を落としていってで達也さんに放縦してしまうんですよね。すぐに切るかどうかは微妙なところですが。
しかし非常に見応えのある1局でした。白鳥プロが興奮するのも分かります。
まとめ。
・こんな難しい手でも間違わずに最速で高打点のテンパイに持っていけるのが達也プロ。
・配牌は悪くても気付いたらツモれば跳満の手に仕上げてくるのが多井プロ。
・ドラより怖いドラ表示牌。
・まだ生きている役牌の対子落としをしてきたら高打点が多い。
※記事内の画像、解説はAbemaTV(麻雀)からの引用です。
引用元サイト:AbemaTV(麻雀)